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人の意識とか態度を変えるにはやはり時間がかかるのです。いちばん頼りになるのはナースたちです。英国の場合、モルヒネを使用する医師がそもそも少ない、使用しても十分な用量をきちんと投与しないということが問題だと思います。用量が低すぎる、または定期的にきちんとモルヒネを使わない。だからナースが痛みの評価を継続的にして、特に病院などでモルヒネが一般的に使われてないところでは、そういう投与の仕方だからモルヒネは駄目だという悪いイメージを作ってしまっている現状をきちんと訴える必要があると思います。
武田 この問題を解決するには革命が必要だという話をTwycross先生と私とキャサリン・フォーリーさんとで話したことがあります。しかしどの国でも革命家は牢屋に入れられるから、ペレストロイカにしようというんで少しやさしいアプローチを心がけているのがよくないのかもしれません。
日本でのニュースは厚生省に対癌10カ年戦略という膨大な予算をもっているところがありますが、そこから患者さんと国民が読んでわかる痛みの本を作りたいから協力してほしいという申し出がありました。医者と看護婦を教育しているのでは間に合わないと思ったからか、消費者側にノウハウを教えてしまおうと考えているのではないかと思います。
日本でのWHO方式の知られ方ですが、一般総合病院を含めで知っている医者は80%くらい、おおむねその線に沿って治奉していを方が50%くらいという答えが最近の調査で出ております。
Andrew それは最高の成績ではないですか。
日野原 武田先生はいつもモルヒネ使用量と文明度は一致するといわれますが、そのへんはどうでしょうか。
武田 単位人口当たりで比べますと、アメリカ、カナダ、英国等たくさん使っている国は、医師、看護婦、薬剤師にこういう教育を始めたのが日本より10年か15年早いということです。そして私たちは空港を離陸したばかりだし、むこうはだいぶん前に離陸しましたから、もう5000mまで上がっていてなお上昇中ということではないかと思います。
Andrew 法律でモルヒネの使用量を制限するというようなことがあると、プロとしてはモルヒネに手が出ないといった面があるのではないかと思います。
武田 開発途上国で量を制限している国はあります。全然使ってはいけないといっている国もあります。しかし日本では量の制限はないのです。もし皆さんがそう感じでいるとしたら、自主規制をしているということです。
西立野 ありがとうございました。時間になりましたので午前中のセッションはこれで終わります。

 

 

 

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